状態量とは、ある系が平衡状態に達したとき、平衡状態に達した経緯によらず一意的に値が定まる物理量のことである。例えば、圧力、温度、エントロピーや内部エネルギーなどが状態量である。しかし、仕事や熱は、系が平衡状態に達した時に一意定まる値出ないため、状態量ではない。状態量は、その性質により、示強性の量と示量性の量に分類することができる。
示強性の量 intensive quantity | 物質の量に無関係な状態量。温度、圧力、濃度、密度など。 |
示量性の量 extensive quantity | 物質の量に比例する状態量。体積、質量、物質量、内部エネルギーなど。 |
内部エネルギーUが状態量であることの証明
内部エネルギー U は状態量であることを、数学的に証明するには、状態 1 と状態 2 を想定し、状態1から状態2への変遷を考える。状態 1 と状態 2 の内部エネルギーをそれぞれ U1 と U2 とする。従って、その差 ΔU は、ΔU = U2 - U1 と書ける。
圧力を一定にして、温度を T1 から T2 まで上昇させる。このために、系に熱 Q だけを加える。すると、状態 1 から状態 2 への変遷は、熱 Q を加えただけだから、次の等式が成り立つ。
一方、熱ではなく、摩擦などの仕事を系に与えて、温度を上昇させることがもできる。このとき、系に加わったエネルギーは仕事 W のみである。従って、この場合、内部エネルギーの変換は次のように書き表せる。
次に、熱と仕事の両方を系に与えて、温度を上昇させること場合を考える。この時の内部エネルギーの差は、次のように熱と仕事の合計となる。
この式からわかるように、ΔU は変遷の経緯によらず一定であるのに対して、QとWは経緯によって異なってくる。この式を微分形で書くと、次のようになる。
一般に、一定量の純物質からなる系の自由度は 2 である。つまり、内部エネルギーは、2 つの変数によって決定される関数となります。内部エネルギーを U とし、その 2 つの変数を x、y とすると、U の全微分は次のように書ける。
これを整形して、次のようにも書ける。
この式と次に示す式が、内部エネルギー U が状態量であることを示す数学的条件となる。