熱力学第3法則

固相のみが関与する定温化学反応に伴うエントロピー変化 ΔS は 0 K の極限で 0 となる。

\[ \lim_{T \to 0}\Delta S = 0 \]

これが Nernst が提唱したネルンストの熱定理である。その後、Planck はネルンストの熱定理を一般化して熱力学第 3 法則を提唱した。それは、すべての純物質の完全結晶のエントロピーは 0 K において、0 である。

\[ \lim_{T \to 0} S = 0 \]

Planck の熱力学第3法則は、分子論的に考えても合致する。完全結晶では分子の空間への配置数は 1 通りのみであるから、

\[ S = k\ln 1 = 0\]

Planck の熱力学第3法則によれば、結晶において分子の配向などに乱れがあれば、0 K においても S = 0 とならない。配向の乱れなどにより、0 K においてもなお残っているエントロピーを残留エントロピー Sres という。また、内部エネルギーやその関数であるエンタルピーについては、絶対値を求めることはできず、系の変化に伴う変化 ΔU や ΔH のみを問題とする。しかし、エントロピーは零点が定義されているので、絶対値を求めることができる。標準状態における物質 1 mol あたりのエントロピーの絶対値をモル標準エントロピーという。